夜間保育という、社会の光が当たりにくい場所で働く私たち。その仕事は、決して楽なものではありません。不規則な勤務、世間との時間のズレ、そして、時に子どもたちの背負う重い現実に直面することもあります。しかし、それでもこの仕事を続けるのは、それを補って余りある、深く、そして静かな「やりがい」に満ちているからです。ここでは、現役の夜間保育士として私が日々感じる、この仕事の本当の価値と、私たちが向き合わなければならない課題について、本音でお話ししたいと思います。 奈良県のこの仕事の最大のやりがいは、子ども一人ひとりと、まるで家族のように深く、濃密な関係を築けることです。日中の大規模な保育園では、どうしても集団としての関わりが中心になりがちですが、夜間保育は少人数制。子ども一人ひとりに、じっくりと時間をかけて向き合うことができます。膝の上で絵本を読み、背中をさすりながら寝かしつける。それは、母親が我が子にするのと同じ、愛情に満ちた営みです。そうした日々の中で、子どもが私を信頼し、心の底から甘えてくれた時。「先生がいるから、寂しくないよ」と、小さな声で言ってくれた時。私は、この子の心の「安全基地」になれているのだと、胸が熱くなります。その子の人生の、最も無防備な夜の時間を、確かに支えられているという実感。これこそが、この仕事の醍g味です。 保護者との強い信頼関係を築けることも、大きなやりがいです。夜間に働く保護者の方々は、様々な事情や葛藤を抱えています。子どもと過ごす時間が少ないことへの罪悪感、仕事の疲れ、経済的な悩み。私たちは、そうした保護者の心に寄り添い、一番の理解者でありたいと願っています。「先生に話すと、心が楽になります」「いつもありがとうございます」。お迎えの時に交わされる、その一言一言が、私たちの疲れを吹き飛ばしてくれます。子どもと親、その両方を支え、家族全体が前向きに進んでいくための一助となれる。その実感は、私たちに専門職としての大きな誇りを与えてくれます。 しかし、この仕事には、向き合わなければならない厳しい課題も存在します。最も深刻なのは、夜間保育に対する社会的な理解が、まだ十分に進んでいないことです。「夜遅くまで子どもを預けるなんて、かわいそう」「親の責任だ」といった偏見の目に、心を痛めることがあります。私たちは、こうした無理解と闘いながら、夜間保育の必要性と、その専門性の高さを、社会に向けてもっと発信していく必要があります。また、職員の確保と定着も大きな課題です。不規則な勤務形態や、仕事の精神的な負担から、離職してしまう人も少なくありません。職員が安心して、長く働き続けられるような、労働環境の改善や、メンタルヘルスケアの仕組みを整えていくことが急務です。 さらに、子どもたちが抱える課題も、より複雑化・深刻化しています。貧困やネグレクトといった、社会的養護の領域に関わるケースも少なくありません。私たちは、保育の専門家であると同時に、福祉の視点を持ち、児童相談所などの関係機関と緊密に連携していく必要があります。子どもの心身に表れる僅かなSOSのサインを見逃さず、その子の未来を守るために、適切な支援に繋げていく。その責任の重さに、押しつぶされそうになることもあります。 それでも、私たちは夜の園の灯りを守り続けます。なぜなら、この灯りを必要としている子どもたちと、その親たちが、確かにここにいるからです。社会の片隅で、静かに、しかし必死に生きる子どもたちの命と成長を支えること。その尊い使命が、私たち夜間保育士を、明日もまた現場へと向かわせるのです。